野球で優れた先発投手を測るための指標に「HQS」というものがあります。HQSとはどのような意味があるのでしょうか。この記事では、HQSの意味や達成条件、QS率との違い、近年注目されるようになった背景などについて詳しく解説します。
近年、野球界ではデータを統計学的に分析して、選手を評価したり戦略を立てたりするセイバーメトリクスが主流になりつつあります。投手を評価するための指標も色々とあるのですが、特に優れた先発投手であると判断するためのものがHQSです。
この記事では、優れた先発投手であると評価される指標であるHQSについて詳しく解説します。
HQSとは「High Quality Start(ハイクオリティスタート)」の頭文字を取った言葉であり、先発投手が試合開始から高いレベルの投球をして、相手バッターを的確に抑えているかどうかを判断するための指標がです。
具体的には、先発投手が試合開始から7イニング以上を投げ、自責点2点以内で抑えたときに1つ記録されるものがHQSです。
メジャーリーグで1980年代頃からHQSが使われ始めました。現在では、メジャーリーグや野球の国際試合では先発投手の公式記録ともなっています。
日本のプロ野球ではまだHQSは公式記録とはなっていません。しかし、先発投手が自ら試合を組み立てる能力を正確に測ることができる指標として、近年注目されるようになりました。
こちらの動画は、楽天の田中将大投手がHQSを記録した時のものです。
HQSを表わすものにHQS率があり、HQS率とは先発試合の中でHQSを獲得した割合を計算したものです。HQS率は次の方法で算出します。
HQS率 = 獲得したHQS数 ÷ 先発した試合数
この数字に100を掛けると百分率で表すこともできます。
HQSと似たような先発投手の指標にQSというものがあります。HQSとQSの違いは、HQSとは最高レベルの先発投手を表す指標であるのに対し、QSとは好投した先発投手を表す指標であることです。また、次のような意味の違いがあります。
HQS:先発投手が7イニング以上を自責点2点以内に抑える
QS:先発投手が6イニング以上を自責点3点以内に抑える
こちらもHQSのときと同じように、条件を達成したら先発投手には1つのQSが付きます。QSの方がHQSよりも達成条件が低いですが、先発投手の安定感を測るための指標として注目されてきました。
先発投手が達成したQSの数だけでなくQS率というのも同時に評価されます。QS率の計算方法は次の通りです。
QS率 = 獲得したQS数 ÷ 先発した試合数
この数字に100を掛けると百分率で表すこともできます。
HQSは、日本のプロ野球ではほとんど評価されていない指標です。その証拠として、年間で最も優れた投手を表彰する沢村賞の選考基準をみておきましょう。
登板試合数:25試合以上
完投試合数:10試合以上
勝利数:15勝以上
勝率:6割以上
投球回数:200イニング以上
奪三振:150個以上
防御率:2.50以下
HQSやQSは沢村賞の評価基準として採用されていません。その代わりに、勝利数や勝率が重視されています。
しかし勝利数や勝率は、先発投手の純粋な能力を測れるものではありません。味方打線の調子と、相手投手の調子に大きく左右されるものです。
先発投手が7回を1失点に抑えてHQSを記録したとしても、味方打線が沈黙して1点も取ることができなければ負け投手となってしまいます。
また、現代野球では投手の完投も重視されていません。先発、中継ぎ、抑えと投手の役割分担が明確化されている現代の野球では、先発投手には6回から7回程度を安定して投げて、先発ローテーションを守ってくれればいいという考え方が主流になっています。
このような時代背景もあり、勝利数よりもHQSが重視されるようになってきました。日本ではまだ公式記録とはなっていませんが、ぜひ野球観戦をする時には先発投手のHQSにも注目してみましょう。