野球には投手の能力を図るための指標としてWHIPというものがあります。WHIPとはどのような指標なのでしょうか。この記事では、野球におけるWHIPとはどのような意味がありどのように計算するのか、本当に投手の能力をみることができるのか、詳しく解説します。
野球には、様々なデータを統計学的な見地から分析して選手を評価したり戦略を構築したりするセイバーメトリクスという分析手法があります。
セイバーメトリクスで分析すると、選手の打撃能力や守備能力を比較的客観的に評価できるのですが、当然、投手の能力を評価するための指標もあります。
セイバーメトリクスの投手指標は現在16個ありますが、その中でも、投手の役割にかかわらず能力を分析できる指標として使われるものがWHIPです。
この記事では、WHIPとは野球でどのような意味を持ち、どのように計算するのか、またWHIPだけを投手の指標とすることに対する問題点についても見ていきましょう。
まず、WHIPの読み方です。WHIPは「ウィップ」と呼びます。「Walks plus Hits per Inning Pitched(投球回あたり与四球・被安打合計数)」の頭文字を取ってWHIP(ウィップ)です。
WHIPを日本語の意味にすると「投球回あたり与四球・被安打合計」となりますが、これでは少しわかりにくいでしょう。
もっと簡単にいうと、WHIPとは野球の試合で投手が投球したイニング1回あたりに、安打と四球で何人の走者を出したかを測る指標です。WHIPは投球の安定感を測るための指標とされています。
WHIPの計算方法は次のとおりです。
WHIP = ( 与四球 + 被安打 ) ÷ 投球回
例えば、3回を投げた投手が2つの四球と1本のヒットを打たれた場合は次のようになります。
(2四球 + 1安打 ) ÷ 3回 = 1(WHIP)
投手の能力を図る指標としては、QS(クオリティ・スタート)がありますが、QSは先発投手のみが対象となります。
WHIPは先発、中継ぎ、抑えと異なる枠割の投手でも同じように能力を比較できる指標として、アメリカの大リーグや台湾のプロ野球リーグでは公式記録として公開されています。
WHIPでの投手の評価は次の表のとおりです。
WHIP | 投手の評価 |
1未満 | 球界を代表する大エース |
1.2未満 | エース |
1.3 | 平均 |
1.4以上 | 問題あり |
WHIPは先発もショートリリーフも投手の能力を正確に判断できる指標とされています。しかし、WHIPを投手の指標として重視しすぎるのは問題があるようです。WHIPは万能の指標ではないといわれる課題についてみておきましょう。
WHIPの問題点の1つは、WHIPは投手だけでなく他の野手の守備能力に大きく左右される点があるということです。
WHIPでは被安打数を数えますが、被安打数は投手の能力だけでなく野手の守備能力でも変わってくる数値です。守備が下手な野手であればヒットになった打球が、守備が上手い野手に取られてアウトになる、ということはよくあります。
その点から、被安打数を計算に入れるWHIPは投手の能力を完全に評価できるものなのか、という疑問の声もあるようです。
WHIPでは、死球(デッドボール)がカウントされない点も疑問視する声があります。死球はあまり出ないことと、完全に投手のコントロールミスであることが多いことから、投手の安定感を測るための指標であるWHIPからは外されているようです。
しかし、走者を出す点では四球や安打と変わらないのではないか、という声もみられます。
WHIPの問題点として、本塁打も、二塁打や三塁打の長打も、単打も、すべて同じ1安打としてカウントされてしまう、という点を挙げる声もあります。
例えば、コントロールが良く四球は出さないけれども、長打の一発を打たれやすい投手と、四球は多いけれどもヒットを打たせない投手がいたら、コントロールの良い投手のほうがWHIPが良い数字になることがあります。
しかし、同じ出塁率で同じくらいのWHIPになるのであれば、長打を浴びやすい方が得点を与える可能性が高まります。
野球は最終的に攻撃側がホームベースを踏んだ回数で試合が決まるゲームだということを考えれば、本塁打も単打も同じように扱うWHIPは信頼性の高い指標なのか、疑問の声もあるのは当然でしょう。