プロ野球の現役ドラフトとは?仕組み・ルールや指名の順番について解説
2022年から日本のプロ野球(NPB)で現役ドラフト制度が始まりました。現役ドラフトとはどのような仕組みとルールで運用されるものなのでしょうか。この記事では、現役ドラフトとはどのようなものなのか、その仕組みやルールについて解説します。
目次
プロ野球の現役ドラフトとは?
2022年12月9日に、日本のプロ野球、NPBで現役ドラフトが実施されました。現役ドラフトの結果、各球団が1名ずつ指名して選手を獲得して、1名ずつ選手を放出する形になりましたが、そもそも現役ドラフトとはどうして行われるようになり、どのような仕組みとルールで運用されているのでしょうか。
この記事では、日本のプロ野球で始まった、現役ドラフトとはどのようなものなのか、仕組みやルールについて詳しく解説します。
現役ドラフト制度が始まった背景
現役ドラフトが日本のプロ野球で始まった背景には、選手会からの強い要望がありました。各球団にはプロ野球選手になって数年たち、そこそこの実力もあるのに1軍での出場機会に恵まれない中堅選手がいます。
実力があるのにチームの戦略などによって出場機会に恵まれない選手の中には、他のチームに移籍すれば確実に1軍での活躍が見込まれる選手もいます。
しかし、現在の制度ではFA権を取得するか、トレードされなければ、FA権を持たない選手の意思では移籍することはできません。
そこで、出場機会に恵まれない中堅選手を移籍しやすくするために、日本プロ野球選手会がメジャーリーグのルール・ファイブ・ドラフトを参考にした仕組みの導入を求めていました。
ただし、日本のプロ野球では1970年から1972年と1990年に、現役選手を対象としたセレクション会議が開催されましたが、定着しませんでした。新ルールでの今回の現役ドラフトが定着するかどうか、注目されています。
現役ドラフト、選手会「望んでいたものに近い形」も改善の余地あり【記者の目】 https://t.co/KvHfxumsxc #巨人 #ジャイアンツ #読売ジャイアンツ pic.twitter.com/RU1BX4FawD
— スポーツ報知 巨人取材班 (@hochi_giants) December 9, 2022
現役ドラフトの意味
現役ドラフトの意味は、他のチームに所属している現役選手を指名して獲得できる制度です。現在のチームで出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させることが現役ドラフトの大切な意味となります。
NPBが参考にしたルール・ファイブ・ドラフトとは?
日本のプロ野球が参考にしたメジャーリーグのルール・ファイブ・ドラフトとは、有望な選手の飼い殺しを防ぐため定められている制度です。
毎年12月のウインターミーティングの最終日にルール・ファイブ・ドラフトが実施されて、レギュラーシーズンで勝率の低いチームから指名権が与えられます。
対象となる選手は、MLBの40人枠に入らない選手です。ただし、入団した年齢ごとに在籍シーズンの制限などのルールもあります。
現役ドラフトの仕組みとルール
日本のプロ野球で実施されることになった現役ドラフト制度の仕組みやルールとはどのようなものなのでしょうか。現役ドラフトの流れやルールについてみていきましょう。
現役ドラフトの対象者とは
現役ドラフトのルールでは、NPB12球団それぞれが指名対象選手をあらかじめ提出します。ただし、指名対象にはできない選手もいます。現役ドラフトの指名対象外となる選手は次のとおりです。
- 外国人選手
- 複数年契約を結んでいる選手
- 翌季の年俸が5,000万円以下(1名のみ年俸が5,000万円以上1億円未満の選手を選択できる)
- FA権を保有している、または行使したことがある
- 育成選手
- 前年の年度連盟選手権試合終了の日の翌日以降に、選手契約の譲渡によって獲得した選手
- シーズン終了後に育成から支配下契約となった選手
高額年俸の選手やFA権を持っていたり行使したりした選手は活躍している選手のはずなので、基本的に現役ドラフトの対象とはなりません。ただし、年俸1億円未満の選手に限り1名まで対象にすることができます。また、育成選手も現役ドラフトの対象外です。
現役ドラフトの流れ
現役ドラフトが実施される流れをみていきましょう。
現役ドラフト会議前日までの流れ
現役ドラフトでは会議が行われる1週間前に各球団から契約保留選手の名簿が提出されます。また、各球団は現役ドラフトの対象となる選手から、2名以上の選手を指名対象選手として選出します。
指名対象選手のメディカル情報は開示する必要がありますが、選手の同意がないと開示できません。事前に指名対象であることを伝えない球団の場合には、誰が対象選手かわからないように、多くの選手から同意を取ることもあるようです。
現役ドラフト会議当日の流れ
現役ドラフト会議は非公開で実施され、各球団は指名対象選手に選出された選手のなかから、それぞれ少なくとも1名は必ず獲得するルールです。
指名の仕組みは、まず各球団が現役ドラフトの指名対象選手から獲得したい選手を1名ずつ投票し、最も投票数の多い球団が最初に指名権を行使します。
そして、2番目の指名は1番目の球団に選手を獲られた球団が指名権を得ます。3番目以降も選手を獲られた球団が指名権を獲得しますが、すでに指名した球団の選手が獲られた場合には、残りの球団の中から最も得票数が多い球団に指名権が渡るのがルールです。
1巡目の指名が終わったら、2巡目は1巡目とは逆の順番で指名していきます。
現役ドラフトでの指名を拒否したらどうなる?
現役ドラフトで指名されても移籍したくないという選手も出てくることでしょう。そのような場合には、その選手はどうなるのでしょうか。
現役ドラフトで指名されたのに移籍を拒否した場合には、トレードを拒否した場合と同じように、その選手は任意引退で退団となってしまいます。
プロ野球選手である以上、日本プロ野球機構のルールには従うという契約書を交わしているので、移籍拒否はトレードと同じ扱いです。
移籍した選手の年俸はどうなる?
気になるのが、現役ドラフトで移籍した選手の年俸です。複数年契約をしていたり、すでに来季の契約を結んでいる場合には、元の球団と新しい球団のどちらがどのような契約で支払うのでしょうか。
選手との契約は元の球団と交わした契約が新しい所属球団に引き継がれ、年俸も元の球団との契約に基づいた額が翌シーズンは新しい所属球団から支払われます。
2022年現役ドラフトの結果について
2022年の現行制度の新しいルールでの現役ドラフトがはじめて実施されました。現役ドラフトはどのような結果だったのかみておきましょう。
現役ドラフトで移籍した選手一覧
2022年の現役ドラフトでは各球団が1名ずつ選手を獲得して、また1名ずつ選手を放出しました。現役ドラフトで移籍した選手は次のとおりです。
指名球団 | 選手名 | ポジション | 前所属球団 |
オリックス・バファローズ | 渡邉 大樹 | 外野手 | 東京ヤクルトスワローズ |
福岡ソフトバンクホークス | 古川 侑利 | 投手 | 北海道日本ハムファイターズ |
埼玉西武ライオンズ | 陽川 尚将 | 内野手 | 阪神タイガース |
東北楽天ゴールデンイーグルス | 正隨 優弥 | 外野手 | 広島東洋カープ |
千葉ロッテマリーンズ | 大下 誠一郎 | 内野手 | オリックス・バファローズ |
北海道日本ハムファイターズ | 松岡 洸希 | 投手 | 埼玉西武ライオンズ |
東京ヤクルトスワローズ | 成田 翔 | 投手 | 千葉ロッテマリーンズ |
横浜DeNAベイスターズ | 笠原 祥太郎 | 投手 | 中日ドラゴンズ |
阪神タイガース | 大竹 耕太郎 | 投手 | 福岡ソフトバンクホークス |
読売ジャイアンツ | オコエ 瑠偉 | 外野手 | 東北楽天ゴールデンイーグルス |
広島東洋カープ | 戸根 千明 | 投手 | 読売ジャイアンツ |
中日ドラゴンズ | 細川 成也 | 外野手 | 横浜DeNAベイスターズ |
現役ドラフトは前の球団でくすぶっていた選手の出場機会を与えることが大きな目的です。すでに、2023シーズンでは中日に移籍して結果を残している細川成也選手もいて、現役ドラフトの効果が現れている球団や選手もみられます。
happy birthday!
— 三重竜党&ハム党 (@3306moedora) August 4, 2023
SEIYA HOSOKAWA!
現役ドラフトでドラゴンズに加入して今やチームに欠かせない選手になりましたね!
バンテリンドームでホームラン2発も打った試合はホンマに凄かった!
今宵はbirthdayホームランが出ることを楽しみにしております! pic.twitter.com/V7WANdmhGs
2巡目指名がなかった理由とは?
2022年の現役ドラフトでは、どの球団も2巡目の指名を行いませんでした。2巡目の指名が行われなかった理由は色々と憶測されましたが、実際にはどうしてだったのでしょうか。
どの球団も2巡目指名を見送った理由は、現行ルールでの現役ドラフトがはじめてだったために、どの球団も保守的に動いてしまった、というのが有力な理由のようです。
かつて、2回現役ドラフトに近い制度を日本のプロ野球界もやってみてうまくいかなかったことから、球団側としては新ルールにも少し戸惑いがあるのかもしれません。
ですが、2回目以降は現ルールでの現役ドラフトの傾向が理解されるようになったら、もっと活性化していくのではないかと予想されます。
まとめ
現役ドラフト制度は、結果によって選手の将来を大きく変えるものです。制度自体が始まったばかりで、球団側もルールなどに戸惑いもあるようですが、プロ野球界の活性化につながるのか今後が注目されます。