プロ野球のFA(フリーエージェント)とは?国内FA/海外FAやポスティングとの違いを解説
プロ野球にはFA(フリーエージェント)という仕組みがありますが、どのような意味なのでしょうか。同じ海外に移籍する場合のポスティングと海外FAとの違いはどこにあるのでしょうか。このきじでは、プロ野球のFA権の種類や仕組みについて解説します。
目次
プロ野球のFA(フリーエージェント)とは?
プロ野球のシーズンオフになると、選手の移籍が活発化します。シーズン中のトレード移籍も行われますが、やはりシーズンオフには球団の来季のチーム作りとしての選手の移籍が増えるようです。
シーズンオフの選手の移籍の話題で、最も注目されるのはFA移籍です。FA移籍という仕組みがプロ野球にあることはわかっていても、具体的にどのようなものか理解できていない方もいるかもしれません。この記事では、プロ野球のFA権について詳しくみていきましょう。
FA権の意味
プロ野球で選手の移籍でよく聞かれるFA(フリーエージェント)とはどのような意味なのでしょうか。
プロ野球では、一定の条件を満たした選手にFA権が与えられます。FA権を持つ選手は、日本では自らの意思で所属球団との契約を解消して、他のチームと自由に交渉することができます。
広い意味では、FA権とは自由契約権ですが、日本では戦力外となった選手が自由契約になることがほとんどなので、FAは特別な権利を持つ自由契約ともいわれています。
FA権の種類
プロ野球ではFAに種類があります。FAの種類についてみておきましょう。
日本のプロ野球の国内FA
日本のプロ野球には、国内FAと海外FAがあります。
国内FA権を取得した選手は、国内のNPBのプロ野球球団12球団と自由に交渉することができます。国内FA権では海外の球団との交渉はできません。
日本のプロ野球の海外FA
日本のプロ野球で海外FA権を取得した選手は、国内の12球団に加えて海外の球団とも交渉することができます。海外FAで移籍した選手は、2022年にソフトバンクからニューヨーク・メッツへ移籍した千賀滉大選手などです。
日本のプロ野球でのFAのしくみについて
日本のプロ野球のFAのしくみについて詳しくみていきましょう。
選手がFA権を獲得できる条件について
日本のプロ野球で選手がFA権を獲得するためには条件があります。FA権を獲得するための条件は、1シーズンを145日として、一軍に登録された年数で決まります。FA権を取得できる条件は次のとおりです。
- 国内FA権
・高卒選手:一軍登録累計8年(通算1160日)
・大学生・社会人選手:一軍登録累計7年(通算1015日)
なお、1シーズンの一軍登録日数が145日を超えても1年間の日数は145日が上限です。また、1シーズンの一軍登録日数が145日を下回った場合には、複数年の登録日数を合計して145日ごとに1年と計算されます。
トレードで所属球団が変わった場合でも、一軍登録日数は引き継いで計算されます。
- 海外FA権
海外FA権は選手の入団時の年齢に関係なく、1軍登録年数が9年となります。
- FA宣言の再取得
FA宣言した選手は、残留、移籍問わず、一軍登録4年(通算580日)で再取得できます。
FA移籍するためには選手からの宣言が必要
日本のプロ野球では、FA権を取得したからといってFA権を行使できるわけではありません。FA権を行使するときには、日本シリーズ終了後の土日祝日を除く7日以内にコミッショナー宛に文書で申請して、自らFA宣言をする必要があります。
補償が発生する場合も
FA宣言した選手を獲得した球団は、その選手の元所属球団に対して補償が必要になる場合があります。
FA宣言した選手には、次のようにランクがあり、補償するべき内容がランクごとに異なるのです。
FA宣言選手のランク | ランクの意味 | 補償内容 |
ランクA | 前球団の旧年俸順位が1位から3位 | 旧年俸の8割の金銭 もしくは 獲得制限外の選手1名+旧年俸の5割の金銭 |
ランクB | 前球団の旧年俸順位が4位から10位 | 旧年俸の6割の金銭 もしくは 獲得制限外の選手1名+旧年俸の4割の金銭 |
ランクC | 前球団の旧年俸順位が11位以下 | 補償不要 |
FAによる人的補償は、それぞれの球団が決めた28名のプロテクトをかけた選手と、育成選手、外国人枠の選手は対象外となります。
FA選手のオフシーズンの稼働期間
FA宣言して、次の移籍先も決まった選手が、その後の元の所属球団の行事に参加することがあります。選手によっては、12月に行われることが多いファン感謝デーに出席することがあります。
ライバル球団に移籍するときには、ファンから見れば裏切り者と思われてブーイングされる可能性もあるでしょう。しかし、オフシーズンに入っても、11月30日までは選手は元の球団に所属しているので、元の所属球団の行事への参加義務があります。
12月のファン感謝デーへの参加は選手の自由意志ですが、ここで長年応援してくれた元の球団のファンに感謝の気持ちを伝えたいという選手も多いようです。
FAで獲得できる人数には制限がある
FA宣言した選手を獲得すると、獲得した球団は契約金や、ランクAとランクBの選手は元の球団への補償金が必要になるので、球団の経済状況で補強に差が開くことが懸念されています。
そのために、日本のプロ野球ではFAで獲得できる選手の数には、ランクAとランクBの選手は2名までという制限が設けられています。
なお、FA宣言した選手の数が全体で21名以上のときには3名まで、31名以上のときには4名まで、41名以上の場合には5名までとなります。
なお、この人数制限は、FA宣言したものの残留した選手と、ランクCの選手には適用されません。
メジャーリーグのFAとの違いについて
アメリカのメジャーリーグでも選手が自由契約となるFAがあります。MLBとNPBのFAには大きな違いがあるのでみておきましょう。
MLBでは、ロースターに登録していた年数が6年に達した選手はFA権を取得できます。日本のNPBと違い、宣言は必要ありません。
条件を満たした選手は自動的にFAとなり、自由に他の球団と交渉できるようになります。
FAとポスティング/トレードでの移籍との違いについて
日本のプロ野球で選手が移籍する方法には、FAの他にポスティングとトレードもあります。FAとそれぞれの違いについてもみておきましょう。
FAとポスティングの違いとは?
ポスティングシステムとは、日本のプロ野球でFA権を取得しない選手が海外移籍を希望した場合に、球団が譲渡金を得て選手を移籍させることができるシステムです。
海外FA権取得までは1軍登録9年と長い期間が必要で、大卒選手や社会人からの入団選手は選手として最も実力を発揮できる時期を過ぎてしまうという問題があります。
海外への移籍を熱望する選手の早期の移籍を実現させることが可能なシステムで、球団としても多額の譲渡金を手に入れることができるチャンスになります。
FAとトレードの違いとは?
プロ野球で選手が球団を移籍する方法にはトレード移籍もあります。トレード移籍は、球団同士の合意の上で選手を取引することです。
選手同士の交換の場合もあれば、金銭で選手を買う場合もあります。
FAとの最大の違いは、選手の意思がトレードでは全く反映されないことです。選手がトレードを拒否する場合には、任意引退する他ありません。
選手がFA宣言するメリットとデメリット
日本のプロ野球では、FA宣言するかどうかは選手の判断に委ねられています。プロ野球選手がFA宣言するメリットとデメリットについてみておきましょう。
メリット
プロ野球選手にとってFA宣言をするメリットです。
自分が行きたい球団に移籍できる可能性がある
プロ野球では、球団ごとの戦力の均衡化を図る目的から、基本的にドラフトとトレードでしか球団への入団や移籍ができません。
FA宣言をして権利を行使すれば、選手が自らの意思で自分が行きたい球団に移籍できる可能性が広がります。
複数年契約を獲得できる可能性がある
FA移籍では複数年契約で高額な契約を獲得できる場合が多く、不安定なプロ野球選手の生活にとって、より長期間の安定した収入が得られる可能性が高まります。
元の球団との交渉を有利に進めることができる
FA宣言をした上で、元の球団にそのまま残留する場合もあります。その場合でも、FA宣言をして他の球団との交渉も行うことで、残留する球団との交渉を選手が有利に進めることができます。
デメリット
FA宣言を行うことのデメリットです。
FA移籍1年目の年俸は前年の年俸が上限
FA移籍1年目の年俸は前年の年俸が上限と決められています。もしも金銭的な目的でFA宣言しても、単年契約で契約金がなければ前年の年俸以上の年俸は得られません。
どこも獲得しない場合には引退の可能性も
FA宣言をしても、どこの球団も獲得に名乗りを上げない場合があります。そのような場合は、元の球団に残留することもありますが、元の球団に残留させる義務はありません。
元の球団も必要ないと考えている選手であれば、契約せずにそのまま自由契約選手になってしまう可能性もあります。最悪の場合、FA宣言をしたことで引退に追い込まれてしまう可能性もあるのです。