【野球ルール】振り逃げとは?条件や記録について解説!
野球のルールをよく知らない人にとっての謎ルールに「振り逃げ」があります。三振したはずの打者が一塁に走ることができる振り逃げとはどのようなルールなのでしょうか。この記事では、振り逃げが成立する条件や、実際にあった振り逃げの実例を紹介します。
目次
野球の振り逃げとは?三振なのに打者が一塁に走れるのはなぜ?
WBC2023での日本代表侍ジャパンの優勝などにより、野球の経験がなくても、野球に興味を持ってプロ野球や高校野球の試合などの観戦を始める方が増えてきました。
野球には経験のない素人には少し分かりにくいルールやプレイがいくつかあります。その中でも特に未経験の人には理解しにくいルールが振り逃げです。
振り逃げとは、打者が三振に倒れた時に、キャッチャーが球を取り損ねると、ある条件が成立していたら、打者がアウトにならずに一塁に走ってもいいというルールです。
一塁ベースに球が到達する前に打者が一塁に到達すればセーフとなり、三振してもアウトにはなりません。
この記事では、振り逃げが成立する条件や、今までに実際の試合で見られた振り逃げについてみていきましょう。
ルールブックに振り逃げというルールは記載されていない
なお、試合の中継などでは「振り逃げ」という言葉がよく使われていますが、野球の公式ルールブックに「振り逃げ」という言葉は記載されていません。
その理由は、野球のルールを厳密に適用すると、振り逃げが可能になるためです。野球で守備側がアウトを取るためには、守備側がべき義務があります。その一つが、ストライクの時のキャッチャーの正規の捕球です。
ストライクである球をキャッチャーが正規に捕球できなかった時には、キャッチャーがアウトを取るべき義務を果たしていないと見なされるので、ストライクにはなってもアウトにはならずに振り逃げが可能になります。
したがって、打者はアウトになっていないので一塁に進塁できるのです。
日本語では「振り逃げ」と言いますが、打者が見逃してバットを振っていなくても、キャッチャーが損ねた時には打者は一塁へ進塁できます。
三振でも振り逃げが成立する条件とは?
キャッチャーが投球を取り損ねても、振り逃げが成立する時と成立しない時があります。振り逃げが成立するための条件についてみておきましょう。
キャッチャーが第3ストライクを正規捕球できなかった場合
振り逃げが成立するための条件の1つめが、キャッチャーが第3ストライクを正規捕球できなかった場合です。第2ストライクまではアウトにならないので、正規捕球できなくてもキャッチャーがアウトを取るための義務を果たしていないとはみなされません。
なお、正規捕球とはノーバウンドで捕球することです。投球がワンバウンドしたら、正規捕球にはならずに、第3ストライクであれば振り逃げできます。
ファウルチップの場合は?
バットに球が一度当たるファウルチップになった場合には、地面に球が落ちる前にキャッチャーが捕球できれば正規捕球とみなされます。第3ストライクの場合には、振り逃げできません。
ファウルチップが地面に落ちた場合にも通常のファウルとなるので振り逃げはできません。
無死一死の場合は1塁に走者がいないこと
振り逃げが成立するための条件の2つめが、無死または一死の場合には1塁に走者がいないことです。
無死または一死で一塁に走者がいた場合には、キャッチャーが第3ストライクを正規捕球できなくても打者は3ストライク1アウトが審判から宣告されます。
キャッチャーが正規捕球していないのに、振り逃げが成立しないのは攻撃側に不利になるように思えますが、この条件は攻撃側を守るための条件です。
もしも、無死または一死走者1塁で振り逃げを認めてしまうと、キャッチャーがわざと第3ストライクの球を落として併殺を狙う可能性が高まります。
この状況での振り逃げは攻撃側が併殺に倒れる可能性が高いことから、攻撃側を守るために、このような条件が定められています。
二死の場合は一塁に走者がいても振り逃げが成立
なお、二死の場合には振り逃げで併殺になることはありません。そのために、二死走者1塁の場面の条件では振り逃げが成立します。
打者が走塁を放棄していないこと
振り逃げが成立する条件には、打者が走塁を放棄しないというのもあります。
打者が振り逃げの成立に気がつかずに、3ストライクの宣告だけで1塁に走らなかった場合には、ダートサークル(ホームベースの周りに描かれている円)から打者が出た時点でアウトが宣告されます。
ダートサークルから出る前に振り逃げに気がついて、1塁方向へ走り出せばセーフの可能性があります。
振り逃げが成立しない条件
なお、振り逃げになりそうな状況でも、振り逃げが成立しない場合というのがあります。振り逃げが成立しない条件もみておきましょう。
第3ストライクの球が打者に触れた場合
第3ストライクになった球が打者に触れた場合には、キャッチャーが球を取り損ねても振り逃げにはなりません。
変化球を空振りしたときなどに見られます。バットを振っていなければ死球になったはずの球を振って3ストライクとなったときには、キャッチャーが取れなくてもアウトが宣告されます。
スリーバント失敗
2ストライクの後のバントが失敗してファウルになった場合には、スリーバント失敗でキャッチャーが正規補給できたかどうかにかかわらず打者はアウトになります。
第3ストライクを空振り後に球が3塁ランナーに触れた場合
3塁走者がホームスチールを試みた場合に見られます。第3ストライクの球が、走者に触れた場合には、キャッチャーが捕球できなくても振り逃げは認められません。
振り逃げはルール上はどのような記録になるのか?
振り逃げは前述したように、野球の公式ルールブックには記載されていないルールです。そこで、振り逃げが成立した場合には、スコアブックにはどのような記録として記載されるのか気になります。
振り逃げが成立する場合には、記録は三振となります。振り逃げを表す記録は特にありません。
ピッチャーにとってはストライクを取った記録に、打者にとっては三振を獲られた記録として残ります。
なお、振り逃げが成立した場合には、1イニング3三振で終わらない場合もあります。振り逃げ1回で1イニング4三振という記録は珍しくなく、振り逃げ2回で1イニング5三振という記録も過去にはあるようです。
野球の試合で実際にあった振り逃げ
振り逃げのシーンは高校野球やプロ野球でもよく見られます。実際に今までにあった振り逃げの実例を見ていきましょう。
振り逃げ3ラン
この試合は、2007年の高校野球神奈川県大会準決勝の、東海大相模高校対横浜高校の試合で起きた振り逃げ3ランです。
4回表の東海大相模高校の攻撃で、2アウト1塁3塁の場面です。打席は9番ピッチャーで、2ストライクの後の鋭いスライダーをハーフスイングします。
横浜高校のキャッチャーがスイングの判定を審判に求めたところ、審判はスイングと判定して三振を宣告しました。3アウトで横浜高校のナインがベンチに引き上げたて、打者もベンチに戻ろうとします。
しかし、東海大相模高校のベンチから一塁に走るように指示が出て、打者は一塁に走ります。この間に、塁に居た走者たちも塁を回り、打者も含めて全員ホームベースを踏みました。
投球がワンバンしていたので、振り逃げが成立していたのですが、横浜高校の方はそれに気がつかずに3アウトと勘違いしてしまったのです。
東海大相模高校の方はワンバン投球を見逃さずに振り逃げをしました。守備が全くいない状態だったので、打者も振り逃げホームランとなり、東海大相模高校は一気に3点を上げたのです。
走りすぎた振り逃げ
この試合は、2015年5月15日のソフトバンク対オリックスの試合で起きた珍事です。
7回表二死走者なしの場面で、低めに落ちる球を打者はスイングして三振に倒れました。
キャッチャーが取り損ねて後逸した球は、審判にあたった後、バックネットに設置された看板の上に弾かれて、キャッチャーは見失ってしまいます。
キャッチャーがボールを探している間に打者は塁を回り、メジャーリーグでも見たことがない、振り逃げ三塁打が成立したのです。
振り逃げからの逆転2ラン
この試合は、2023年4月16日のソフトバンク対楽天の試合です。
楽天が1点リードの場面です。8回に、ソフトバンクの先頭打者が空振り三振で、振り逃げで一塁に走りました。
キャッチャーもすぐに球を一塁に送球して、打者は一塁でアウトになるはずでしたが、ファーストが球を取り損ねてしまい、一塁がセーフになります。
その次の打者が本塁打を打ったために、振り逃げからの逆転2ランで、その後試合は6対3でソフトバンクの勝利に終わりました。
大谷翔平の振り逃げからのウォードの2ラン
海の向こうのメジャーリーグでも振り逃げの場面を見ることができます。この試合は、2023年7月22日のパイレーツ対エンゼルスの試合です。
5回無死での2番DHの大谷翔平の打席でしたが、大谷翔平は外角スライダーを空振りして三振に倒れます。しかし、投球が暴投となり振り逃げで一塁に出塁します。
その後、4番ウォードがホームランを打ち、大谷翔平も生還して、振り逃げからの2ランとなりました。